建物に関わる法律である建築基準法と、東京都が定める建築安全条例や都道府県などの自治体が定める建築基準条例との違いについて解説しています。
また、法律、政令、省令、施行令、条例といった用語の基本的な意味や関係性、条例に違反した場合は法律違反になるのかなどについて、ポイントをまとめています。
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※2021.3.10改訂(2013.10.29公開)
建築基準法と建築安全条例・建築基準条例の違い
法律は国が定めており、建物の法律としては建築基準法が制定されています。法律に違反すると、重ければ懲役などの罰を受けることになります。
一方、東京都の建築安全条例や市町村の建築基準条例といった条例は、その地域の特性に応じて地方公共団体が定めており、罰金などの罰則はありますが法律ではありません。
しかし、確認申請で適合させるべき項目として建築基準法第六条で定められている建築基準関係規定には、消防法やバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)などの法律が含まれるほか、政令や省令、自治体で定める条例も含まれます。
つまり、建築安全条例や建築基準条例といった条例を守ることが建築基準法で規定されているのです。では、条例に違反した場合は、法律違反にならないのでしょうか?
法律と施行令・施行規則の関係
ここで、少し話はそれますが、法律の範囲について確認したいと思います。
国全体に適用される法令には、効力の強い順から法律、政令、省令(府令)があります。これらは国会や内閣、各大臣などが定めています。地方公共団体が定める条例の規制は、例外はありますが基本的に国の法令の範囲内で定められています。(参考:国民生活センター「新・やさしく解説法律基礎知識 第1回法令の種類を知ろう①」)
法律は、民法、商法、建築基準法、消防法、バリアフリー法等で、国権の最高機関であり、立法機関である国会で制定されます。また、~法施工令という、行政機関である内閣が定める政令、~法施行規則という各省庁の大臣が定める省令があります。
法律で大まかな方針を定め、政令や省令で細かな数値規制や運用方針を定めるという構成になっていることが多いです。法律の条文において、「・・・の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」という書かれ方をしている場合などです。
このような構成になっているのは、法律を改正する場合には国会で審議されることになり、野党の反対などがあれば長い時間がかかる場合もあり、大きな災害や事件があった際に首相や大臣の判断で速やかに対応ができるようにするためです。
そのため、施行令や施行規則に違反した場合も法律違反をしたことになるのです。
条例に違反した場合でも法律違反になる理由
東京都の建築安全条例や都道府県などの建築基準条例などに違反した場合について解説します。
「テナント入居での保育施設開業の注意点。建築基準法(用途変更)やバリアフリー法」のページに、都内や横浜市内では条例によって、0㎡からバリアフリー法の規制がかかるという話を書きましたが、この規定に違反した場合には単に条例違反になるだけで、法律違反にはならないのではないかという質問を頂きました。
答えは「ノー」です。
これは建築系の法規(建築基準関係規定という)に良く見られる形式ですが、法文の中にその法律で定めた以上の内容を、地方公共団体等が制限を付加することができるという文言を書いているのです。
たとえば先程のバリアフリー法では、第十四条の3項で、
地方公共団体は、その地方の自然的社会的条件の特殊性により、(中略)高齢者、障害者等が特定建築物を円滑に利用できるようにする目的を十分に達成することができないと認める場合においては、(中略)条例で必要な事項を付加することができる。
と記載されています。
つまり、法律で定められたおおまかな方針について、地方公共団体でその方針を定めてよいこととしているのです。先述の法律と政令の関係が法律と条例の関係に置き換わった構成になっているのです。
そのため、条例で決められた数値ではあるものの、それに従わなかった場合には法律違反ということになるのです。
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