完了検査とは、建築工事の完了後に特定行政庁や指定確認検査機に申請する検査です。完了検査に合格することで検査済証の交付を受けられ、建物を使用できるようになります。

この記事では完了検査とはどのようなものかを建築基準法をもとに解説し、検査済証のない建築物が多く存在している現状やそのデメリット、検査済証がない場合の対応方法についてまとめています。

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※2020.5.14改訂(2013.10.27公開)

完了検査は竣工後に建築物の法適合性を証明する申請です

工事が完了した場合には、「建築主は建築主事に検査を申請しなければならない。」とされています。(建築基準法第七条。民間に申請する場合は「建築主事」ではなく「国土交通大臣の指定を受けた者」になる。第七条のニ)

それも、「工事が完了した日から四日以内(同第七条2項)に申請をしなければならない。」とされています。

そして、基本的には、この「完了検査(新築の場合は建築物全ての工事、増築や大規模の修繕、模様替え等の改修の場合は避難施設等に関する工事についての検査)に合格し、検査済証の交付を受けなければ、建物(改修の場合は「避難施設等に関する工事」に関する部分)を使用してはならない。(同七条の六)」とされています。

完了検査がされていないことによるデメリット

この完了検査についての内容は、上記の様に建築基準法の条文に明記されているにも関わらず、耐震偽装事件以前は、確認申請と比べて非常に軽視されており、検査済証の無い建物が数多く存在します。地域全体で一棟も出していないという場所もあるといいます。

そして、これらの検査を受けていない建物は原則的に確認申請を提出しての改修増築用途変更を行うことができません。先述の様に検査を行わずに使用すること自体が違法であるだけでなく、検査を受けていなければ確認申請の図面通りにできているかどうか分からないためです。

行政によっては、検査を受けていない物件でも確認申請の提出を認めている場合がありますが、竣工当時の建築基準関係規定に 適合していることを証明することを求められる場合がほとんどです。

これを証明するとなると、建築士の立場としては新築の設計と同じかそれ以上の労力がかかると言わざるを得ません。自分の設計ならまだしも、他人が設計したものの法適合性を証明しようとするのであるから責任は重大です。もちろん構造計算もや り直さなければなりません。構造計算書が残っていなければ、他人がどういう構造計算をしたのかを推理しながら、です。

確認申請を提出するためのスタートラインに立つだけで多大な費用と時間を要することになってしまうのです。

完了検査がされているか分からない建物をどうするべきか

保育所や託児所等の児童福祉施設、老人ホームやデイサービスセンターなどの老人福祉施設等は厚生労働省が面積を確認し、200m2を超えていれば用途変更の申請が行われていなければ認可しないようになってきています。

また、金融機関もコンプライアンスの観点から違法物件には融資しないようになってきており、現状は検査を受けていない物件への入居にあたっての工事であっても融資をしてくれるものの、行政指導等もあり、今後融資を得られないケースも増えてくると思われます。

せっかくテナント契約したのに、開業できないなどということにならないよう、契約する前に不動産業者に必ず、確認済証、検査済証を取得しているか確認するようにしてください。
また、確認済証を取っているからといって安心するのではなく、必ずセットで検査済証も取っているか必ず確認するようにしてください。

確認済証や検査済証が手元にない場合

確認申請や、完了検査は受けているもののそれらの書類を紛失してしまっている場合には、役所に言えば 「確認済証明書」あるいは「台帳記載事項証明書」という書類を発行してくれるので、それを持って確認済証、検査済証の代用とすることができます。

そのため、書類の有無ではなく、確認申請、 完了検査を受けているかどうかに留意するようにしてほしいと思います。

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