建物を有効活用するため、知っておきたいリスクと責任

建物を所有するみなさんには、建築主責任・所有者責任という重みを理解していただけたらと感じています。

2015年5月には、川崎市の日進町の簡易宿泊所で火事が起きました。違法に増築した建物で、10名の方が亡くなるという痛ましい事故でした。テレビのインタビューでは、所有者が「違法建築とは、思いも寄らなかった…。人を死なせてしまって…」と話していました。

建物は事故や災害の引き金となり、人を死なせてしまうことがあります。猟銃のように役立つ反面、事故で人を殺めてしまう可能性がある。猟銃に免許がいるように、建物を建てる時に確認申請が必要であり、安全に運用する基準として建築基準法やその関連法規があるのだと理解していただきたいのです。

図4

ご紹介したケースのように、現状では、建築主、建物所有者の責任が正しく伝わっていません。図4のように、建物に係わるプレイヤーは、それぞれ法的な責任を負っています。こうした状況に対して、我々のような設計者や施工者は、建築主との契約時や建物の引渡し時に、保有することで生じるリスクと責任を説明して、理解を得なくてはいけません。建築主への説明を怠ってきたからこそ、あの低い完了検査の受検率を招いてしまったのだと考えています。

さらに、不動産仲介会社の責務も増しています。不動産仲介会社は、建物販売時に購入者に所有者責任を説明していく必要があります。今後、不動産取引が活発になればなるほど、実際に建物を建てた建築主と、売却などで後から保有することになった建物所有者が異なるケースが増えてくるからです。不動産の専門家として購入者や入居者にリスクと責任を説明する必要があるのです。

建物は社会のインフラであり、経営者・事業者の方にとっては事業の基盤でもあります。保有するにあたってしくみを理解していただいて、活用して利益をあげていただきたいのです。不安な点があればそのままにせずに、我々のような会社にご相談ください。我々も建物を通して、社会とみなさんの事業に貢献できればと願っています。

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講演風景

2015年6月23日 イトーキ東京イノベーションセンター SYNQA
取材・文・撮影:納見 健悟(フリーランチ

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