違法建築の原因、深刻な完了検査の未受検率

違法建築を生む最大の原因となっているのは、完了検査の受検率の低さです。検査済証の交付件数と完了検査率の推移は、統計データが存在しています

グラフは、昨年2014年7月に国土交通省による「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」から引用したものです。

統計を取り始めた最初の年が1998年(平成10年)で、黒い線が行政(建築主事)による検査率を示しています。当時は指定確認検査機関がなく、すべて行政が確認申請の審査と完了検査を行っていました。検査の受検率は、わずか38%。過半数にも届きません。

一 般の方にこのデータをお知らせすると、「そんなに少ないのですか?」と驚かれることがあります。しかし、実務に携わっている立場からすると、これでもかな り多いように感じます。その理由の1つには、この統計には行政が建設している公共の建物も含まれているからです。公共施設は検査を受検しないことはあり得 ませんから、相対的に検査の受検率を押し上げる効果があります。小規模な建物ほど受検率が低く、民間の住宅に限定すると、10%を割る可能性もあります。 それほど、検査が受けられていませんでした。

検査を受けなかった弊害はどのようなものでしょうか。検査済証を取得した後でなければ建物を使 用できないのにも係わらず、17年前38%の検査率にしかなりませんでした。17年も前の話ではないかと感じられるかもしれませんが、建物の寿命は数十年 ですから、まだまだこれからの問題だと言えるのです。

東日本大震災や既存建物の耐震化を推進する耐震改修促進法の改正がきっかけとなり、建 物の耐震化は建物所有者にとっても関心が高まっています。しかし、いざ耐震改修を行う際には、完了検査を受けていない建物は改修に伴う確認申請を受け付け てもらうことが難しい現実があるのです。

耐震改修を推進するための法律を改正したのですが、完了検査を受けていない建物が多く、改修のため の確認申請がスムーズに実施できないという事態が起きています。監督官庁の国土交通省は、実態調査の結果を受けて、検査を受けていない相当数の建物も改修 できるようにするために、先ほどご紹介したガイドラインを出しました。

検査率が低かった主な原因として、現場で大きな変更を行ったため、違法状態に陥ったことが考えられます。また、昔は融資の際に、確認済証の提出は求められても、検査済証の提出を求められていませんでした。それらが、低い検査率につながったのだと言われています。

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