既存不適格建築物とは?(1)-法3条の2、法86条の7-

■法改正等によって、現在の法律に適合しなくなってしまった建築物

既存不適格建築とは、竣工時は適法に建てられていたが、法改正等によって、現在の法律に適合しなくなってしまった建築物のことです。
既存不適格建築物は、そのまま継続利用する場合には、遡及適用はしません。しかし、「増築等(←用語の意味については後ほど詳述)」を行う場合には、増築等を 行う部分だけでなく、原則既存部分も遡及適用されます。しかし、この遡及しなければいけない部分は計画の内容によって様々な緩和があるのです。
この既存不適格建築物に関する緩和規定は構成が複雑で、しかも条文自体もとても読みづらいため、図解を交えてできるだけ分かりやすく解説したいと思います。

既存不適格建築部に対する制限緩和の条文の構成は、
法第3条第2項→
法第86条の7第1項~第3項→
令第137条~137条の15
となっています。 順番に見てみましょう。

法第3条第2項

条文を引用します。

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若 しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物 の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。

実は既存不適格建築物に関する規定は平成17年の6月の改正まで、この法第3条2項の条文しか存在せず、どのような範囲について、どのように適用するのかは、特定行政庁の運用指針に任せていた様です。
そこで、17年の法改正時に運用指針を明確化する目的で、法第86条の7が制定されます。

法第86条の7

法86条の7は「既存の建築物に対する制限の緩和」というタイトルで、法3条第2項の、規定を適用しない「範囲」を定めたものです。
条文をそのまま引用するととても長いので、要点だけを下記にまとめます。不適用とされる条項についてはリンクを参照してください。
1項
この項で定められた法および政令の条項は、政令で定める範囲において増築等(増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替)をする場合には適用しない。
2項
独立部分が2以上あるものについて増築する場合には、増築等をする独立部分以外の独立部分については適用しない。
3項
この項で定められた法および政令の条項は、増築等をする部分以外の部分については適用しない。

1項では一定の規模以下で「増築等」を行う場合には既存部分に遡及しないことが定められています。小規模なものであれば、影響が少ないだろう、という考え方であると推測されます。詳しくは既存不適格建築物とは?(2)-既存不適格の範囲1:法と政令の関係と基準時-で述べます。
2項は非常に読みにくいですが、「増築等」を行う場合、既存部分で不遡及になる部分(独立部分)について定められています。詳しくは既存不適格建築物とは(3)-既存不適格の範囲2:令137条の2~12-で述べます。
3項は「増築等」を行う場合に、既存部分で遡及されない条項が定められています。採光や換気、シックハウスなど、重要ではあるけれども、「増築等」を行うことによる悪影響が少ないと考えられる条項が、既存部分では不遡及となっています。
また、ここで重要なのは、1項において、「増築等」という言葉がこの条項で定義されている点です。この条文で「増築等」と「用途変更」が明確に区分されるのです。